コーヒーの味を決定づける重要な要素の一つが「焙煎」。
コーヒー豆を炒り、熱を加えることで、コーヒーの持つ美味しさや香ばしい香りを引き出す工程です。
その工程を支える、キャリア26年のプロフェッショナルに焙煎の奥深さを聞きました。
コーヒー大事典
AGF®のコーヒープロフェッショナルたち
私たちAGF®のコーヒーは、さまざまな分野・技術の専門家の手を介して、お客さまの元へと届けられています。
「最高の一杯をお届けしたい」という思いのもと、持てる技術と知識を総動員して取り組む、舞台裏で活躍する「コーヒーのプロフェッショナル」をご紹介します。
焙煎スペシャリスト
話し手
AGF関東㈱ RC第一グループ 焙煎担当
田中幸彦(たなかゆきひこ)
1978年味の素AGF㈱入社。40年にわたってコーヒー作りの現場で技を磨く。
1995年に現在の焙煎チームに着任し、製品の焙煎を26年にわたって担当。
好きな飲み方は「レギュラーコーヒーをペーパードリップで」。
焙煎とは、まだ緑色のコーヒー豆(グリーンビーン)に熱風を当てて熱を入れる作業。熱が入ることで、コーヒー豆に独特の香りと味わいが生まれ、豆の色も私たちがよく見る茶色いものに変わります。その作業を司るのが、田中が率いる焙煎チームの面々です。
「このセクションでは、コーヒー飲料のほか、お菓子に使われるコーヒー豆の焙煎なども行っています。低温で時間をかけて、しっかり焙煎すればまろやかな味わいが生まれますし、一気に高温・短時間で焙煎すると、豆の特徴が際立った、クセの強めな味わいになります。
また、最初に高温で、その後低温でじっくりと焙煎を行うと、豆の持つ香りを活かしながら、まろやかさも残して焙煎することができます。どのような味わいを作り出すかによって、焙煎の温度や時間等を変えているのです」。
同じコーヒー豆でも、焙煎の温度や時間によって、まったく別物になります。ですから、焙煎工程はまさに「コーヒーの味を決める」、重要な工程なのです。
焙煎する温度や時間、焙煎方法は、銘柄ごとに細かく定められています。しかし、ただ決められた通りに焙煎を行うだけでは、常に安定した美味しさは生み出せないそう。
「たとえば、豆の産地や品種、あるいは季節によってコーヒー豆の中に含まれる水分量は変わります。また、寒い日には豆が冷えた状態で工場に届きます。ですから、その日のコーヒー豆の状態に合わせて、ベストな焙煎の温度や時間を考える必要があるのです。
また、最近飲まれる方も多い『カフェインレス・コーヒー』の焙煎も難しいですね。カフェインレス・コーヒーはカフェインを除去する工程を経ているため他の豆とは水分量が違いますし、もともと豆の色が黒いので焙煎の度合いを判断しにくいのです」。
焙煎中のコーヒー豆の色と、「サンプルカラー」と呼ばれる焙煎見本とを見比べながら、焙煎のスペシャリストの経験にもとづいた調整を加えて誕生する、AGF®のコーヒー。ぜひ、焙煎作業にも思いを馳せながら、お楽しみください。
私たちが焙煎したコーヒーは、コンビニの店頭挽きコーヒーにもなっていて、店頭で『美味しい』と話しているのが聞こえると、私たちもとても嬉しい気持ちになります。これからも、飲んだ人がくつろげるような、美味しいコーヒーを作っていきます。
おすすめ記事
コーヒーができるまで
味と香りの研究者
AGF®では、コーヒーの成分や効果などを研究する「開発研究所」で、継続的なコーヒー研究を行ってきました。
産地、品種はもちろん、焙煎方法、豆の挽き方、お湯の温度まで、さまざまな要素がコーヒーの味や香りにどう影響するかを研究し、そこから得られた知見を製品開発などに活かしています。
今回は、「美味しい一杯」を科学の視点から追究する、「コーヒーの専門家」に話を聞いてみましょう。
話し手
味の素AGF㈱ 開発研究所 技術開発部 基盤技術開発グループ
高橋怜(たかはしれい)
2019年味の素AGF㈱入社。開発研究所に配属。
現在まで「美味しいコーヒーのための味・香りの研究」「コーヒーによるココロの変化解明」の研究に従事。
登山が趣味で、「山頂で飲むコーヒーが一番美味しい」そう。
AGF®では、コーヒーの美味しさを研究するために、1985年に「開発研究所」を開設し、コーヒーに関するさまざまな研究を継続的に行っています。具体的に、どのような研究を行っているのでしょうか。
「もっとも大きなテーマは、やはりコーヒーの『味』と『香り』の研究です。さまざまな品種・産地のコーヒーの成分を高精度な分析機器を使って分析し、どの成分がどのような風味につながるのか、どの成分に着目したらより美味しく飲んでいただけるコーヒーを作り出せるのか、その知見を新しい製品にどう活かしていくか等を研究しています。また、コーヒー豆の成分だけでなく、被験者にコーヒーを飲んでもらって、その反応や、心理的な変化の研究なども行っています」。
単に成分を分析するだけでなく、コーヒーを飲むことが与える影響まで、多様な視点からコーヒーについて研究を行っているそう。研究で得られた知見は、新商品の開発などにも役立てられるそう。「File.01 焙煎スペシャリスト」でご紹介した焙煎担当への指示書なども、もとは開発研究所で作っています。
微妙な味わいの違いを見つけ出し、分析する研究員。繊細なコーヒーの味・香りを分析するためには、特別な知識や感性が求められるそう。
「コーヒーの研究においては、有機化学に関する知識は欠かせません。コーヒーは香りが重要なため、この香りがどのような成分から発せられているのかを判断できる知識があると、研究がスムーズにはこぶのです。それから、実際に嗅いだ香りをうまく言語化する能力も重要です。香ばしいとか、まろやかだとか、上手に言葉にできることで、他の研究者とのコミュニケーションも円滑になります。ですから、日常からコーヒー以外の食品にも積極的に触れて、味覚・嗅覚の引き出しを増やすことを意識しています」。
まるでワインのソムリエのようにコーヒーの味わいを分析し、より愛されるコーヒーのあり方を考える、開発研究所の研究員。AGF®の味わいの裏には、そんなプロの仕事が隠れているのです。
美味しいコーヒーをお客さまにお届けできるよう、これからも頑張っていきます。ぜひ、いろいろなコーヒーを試して、好みの一品を見つけていただけたら嬉しいです。そして、世の中にコーヒー好きな方がもっともっと増えますように!
品質管理の専門家
コーヒーは生き物。不適切な取り扱いをすれば、その品質は簡単に損なわれてしまいます。
AGF®では、コーヒーの原料となるコーヒー豆等の素材や、完成した製品の品質チェックなどを、「品質管理グループ」が担っています。
AGF®の美味しさを守る「砦」のお仕事を、のぞいてみましょう。
話し手
AGF鈴鹿㈱ 管理部品質管理グループ
栂原礼子(とがはらあやこ)
3年間の総務グループ勤務を経て品質管理グループへ。
5年にわたり、豆や製品の品質管理を担当。
コーヒーは「気分によって甘さやミルクの量を変えて楽しむ」のが好き。
AGF®のコーヒーの品質に責任を負う品質管理グループ。そこでは、コーヒー豆等の「原料」と完成した「製品」の、両方の品質管理を行っています。また、完成した製品の検査は「風味」と「衛生」の2つの側面から、厳しい基準のもとに行われています。
「まず原料であるコーヒー豆の検査ですが、こちらは輸入前に行います。生産国に実際に行って、出荷前のコーヒー豆の色、味、香り、傷がないか等を確認。AGF®のコーヒーにふさわしい品質かを、しっかりと確認しています。コーヒーの味わいは原料となるコーヒー豆の品質に大きく影響されるため、輸入前に厳しい目でチェックすることが必要なんです」。
良いコーヒーを作るには、コーヒー豆の質にこだわることが大切だと話します。
「同様に、完成した製品についても、私たちが最終検査を担当しています。ランダムにサンプルを抽出して、味・香り等がAGF®の製品としてふさわしいものとなっているかを確認。さらに、『微生物検査』によって、衛生面での安全性が確保されているかを確認しています。
美味しさへのこだわりはもちろんですが、大前提として『安心して飲める』製品になっていることも重要です」。
コーヒーの品質管理を行う検査員は、味や香りのわずかな違いにも気付ける、まさに「コーヒーのプロフェッショナル」。その能力を維持するためには、日頃からの努力が必要です。
「私たちの仕事では、製品の味や香りを自分自身の味覚・嗅覚を使って検査します。わずかな違いにしっかり気付けるよう、定期的な官能トレーニング(味覚や嗅覚の訓練)は不可欠です。また、日頃から体調管理に配慮し五感が正しく機能するように気をつけたり、検査の前は、刺激の強い食べ物を控えるなど、注意をしています」。
特に風味検査は、お客さまに製品をお届けする直前の、いわば「最後の砦」。常に緊張感を持って検査にあたっているそうです。
コーヒーにとって「味わい」はもちろん大切な要素ですが、同様に大切なのが「安心して飲める」こと。AGF®では、お客さまに高品質のコーヒーを安心してお楽しみいただけるよう、今日も検査員の鋭い味覚・嗅覚で、その検査を行っているのです。
コーヒーにはさまざまなカテゴリ、産地、味わいのものがあります。ぜひいろいろお試しいただき、お気に入りを見つけてください。私たちの作った製品がそこに加えていただけて、ひと息つく時のお供になれたら嬉しいです。