第四十二回目の式年遷宮が行われた後の、平成27年10月17日・18日。5月、7月に続き、第三回目となる「世界文化遺産 上賀茂神社 式年遷宮記念文化事業 Supported by AGF Blendy 神山湧水珈琲」、そして「神山湧水のしらべ」が、京都府の上賀茂神社にて開催されました。
▲秋は二ノ鳥居の中に野点珈琲ブースを設置。春、夏とは、また趣が異なる場所での開催となった。
5月、そして7月に続いて開催された「神山湧水（こうやまゆうすい）珈琲」。第三回目となる今回は場所を境内の「二ノ鳥居（にのとりい）」の中に移し、第一回、第二回目と同じ「ならの小川」沿いでありながらも、これまでとは異なる趣の会場で実施されました。
野点（のだて）珈琲ブースでは、上賀茂神社の神山湧水で淹れた神山湧水珈琲と聖護院八ッ橋（しょうごいんやつはし）が振舞われ、秋雨が降るなかにも関わらず多くの方々が訪れ、神山湧水珈琲で温まりながら会話を楽しむ姿が見られました。
▲水に見立てた白砂、そして陸地に見立てたコーヒーの豆から、コーヒーノキの幼木が育っている様子を表現した。
7月にガイドツアー「神山湧水のめぐみ」を行った作庭家小川氏の作品。
▲ブースの隣には「ならの小川」が流れ、せせらぎの音がより一層よく聞こえる。
▲秋の野点珈琲ブースは木立の中のお庭に緑台を設置した、落着きのある空間。
▲第四十二回目となる式年遷宮をお祝いする灯篭を設置。日が落ちると灯篭に明かりが灯り、神秘的な雰囲気となる。
▲第三回目となる今回も、お客さまの目の前で丁寧に神山湧水珈琲をドリップし、聖護院八ッ橋と共にふるまわれた。
▲神山湧水珈琲を淹れてお出しする器は「東北器の絆プロジェクト」でAGFが支援をしている東北の4窯元の器。それぞれの器に異なる趣が感じられる。
神山から神山湧水が湧きだし、境内を流れていく様子が分かる、上賀茂神社と「神山湧水珈琲」の“水のご縁”を表現したジオラマが展示されました。“和の真髄”である神山湧水と“洋の真髄”である珈琲が出会い神山湧水珈琲が誕生し、「水のご縁」によって結ばれた世界を表現しています。境内のジオラマは総桧造りで全体は約80分の1、楼門は少し大きめの50分の1のスケールで造られています。
▲提灯を持って参拝する参加者の皆様。初めて夜に参拝をするという方も多く、昼間とは違う幻想的な雰囲気に包まれた参拝となった。
神山湧水珈琲を振舞った10月17日の夕方より、AGFが協賛する文化事業として、「神山湧水のしらべ」が開催されました。
参加者は京都の伝統工芸を学ぶ学生たちが和紙と竹で作った趣のある提灯を持ち、「ならの小川」の水の流れを感じながら川沿いの“水の道”を歩いて参拝し、上賀茂神社の式年遷宮をお祝いしたほか、神山（こうやま）の恵みである神山湧水（こうやまゆうすい）で淹れた神山湧水珈琲を自らドリップする体験をして、上賀茂神社が守り続けてきた「水」や「文化」に触れるひとときを楽しみました。
▲「賀茂献灯」と書かれた提灯を持って参拝を行う提灯献灯。
▲日の落ちかけた薄暮の時間より、提灯を持ち、「ならの小川」沿いの道を歩くところから提灯献灯は始まった。
▲神職の方の説明を受けながら、提灯の明かりを頼りに境内を歩いた。
▲珈琲教室では、AGFの社員からレクチャーを受けながら、神山湧水珈琲をドリップする体験を行った。
▲教わった方法で、それぞれが神山湧水をゆっくりと注いで、神山湧水珈琲をドリップ。
▲自分でドリップした神山湧水珈琲の香りと味を楽しみながら、歓談を楽しんだ。
上賀茂神社 権禰宜 神職より、神様の力がみなぎる式年遷宮の秋の日、“水”をテーマに催される花と能のひとときを、小川のせせらぎ、虫の音とともに楽しんでほしい、とご挨拶がありました。
神人和楽―「神山湧水のしらべ」は月の輝く静謐な夜、神様にささげられ人々に享受されました。
能楽観世流シテ方・橋本忠樹氏の解説で、能の楽器小鼓の魅力、能《養老》《融》の紹介がされました。
やがて―。静かな境内。凛とした小鼓の音が響きます。能楽囃子幸流小鼓方・曽和鼓堂氏は、能《翁》を思わせる演奏のあと、拝殿へ向き直り、置鼓（おきつづみ）という、祝言能に付く前奏曲を厳粛に奏します。《翁》は古来より神事としてあつかわれ、“とうとうたらり たらりら”という詞（ことば）で、途切れなく流れる水を表します。
神妙な趣で幕を開けた“水”の催し。小鼓の音に誘われるように、華道｢未生流笹岡｣家元・笹岡隆甫氏の「花手前」が始まります。「花手前」とは、花を生ける様子を所作として見せること。今回花を生けるにあたり、笹岡氏は、ならの小川のご神水を汲み、花にも上賀茂の自然がもたらした恵みをささげることにしました。京都の漆工芸家・三木啓樂氏により、この催しのためだけに創作された、漆黒に、瀧を螺鈿で表現した花器に、笹岡氏は颯爽と迷いのない所作で秋の風景を生けてゆきます。そして、橋本氏の謡う《養老》は低く、ときに力強く笹岡氏の所作と呼応します。
笹岡氏が舞台から下がると、まるでずっとそこにあったかのような“日本の秋”が残されました。その風に吹かれるような佇まいの中、独調《養老》が演奏されます。―底澄み渡るさざれ石の…薬の水 まことに老を養うなり―神代より、水は薬のように人の命を育んできました。小鼓は、皮に一定の湿り気を含まないと音が鳴りません。今宵は清らかに流れる湧水も手伝い、ひときわ澄んだ音色です。
最後は、仕舞《融》。所作に富む舞は、水面に映る月のさまざまな表情を見せ、催しはクライマックスに。欠けた月をも見事な比喩で美しい謡に仕立てる能の詞。日本人が自然を愛でてきた豊かな感性に、改めて気付かされます。晴れた夜空には、生けられた花を照らすように、くっきりと三日月が浮かんでいました。
日頃から水・波・光をテーマに作品に取り組む三木氏は、今回、水のイメージを深くみつめなおし、花器の色に黒という色を選びました。黒はすべての色を内包しつつ、無色透明の水のように物の色と形を映します。また、ウルシという言葉には、潤いをその形にとどめる、という意味があるのです。
笹岡氏は、花材として紅葉した紅万作（べにまんさく）や満天星躑躅（どうだんつつじ）、薄（すすき）をはじめとした秋草を使い、グラデーションで彩られる日本の秋を表現。花を生けるとき花はいつも師である―太陽に向かって咲く花は、どんなときもうつむいてはいけないことを、ほころぶつぼみは、人が歳を重ねる美しさを教えてくれる―笹岡氏が伝えるこの言葉の中に、生け花の本当の魅力があるのかもしれません。
提灯献灯は滅多にない良い機会でした。若い頃は地元の賀茂社の末社に、夜の参拝に行ったものですが、この夜のいい雰囲気は久しぶりです。また、ハンドドリップで淹れた神山湧水珈琲は、すっきりした味わいなのに濃さや香りもしっかりしていて、とても美味しいコーヒーでした。八ッ橋との相性も良かったですね。京都の水はどこも結構美味しいですが、神山の水は特に柔らかくてまろやかだと感じました。
提灯を持っての参拝は、夜なのでいつもと違った特別な感じがあり、神職さんのお話も興味深かったですね。幻想的な雰囲気を楽しむことができました。コーヒーのドリップ体験は、普段マシンで淹れているので、ハンドドリップをすること自体が新鮮でした。注ぎ方やお水で味わいが変わるというのは奥深かったので、自分なりに研究したいと思います。神山湧水珈琲は、一口目がスッキリ、二口目がまろやかに感じました。とても美味しかったです。
提灯献灯は普段できない体験で面白かったです。夜の上賀茂神社は初めてでしたが、月明かりのもとでの参拝は、とても神秘的な雰囲気がありました。珈琲教室も楽しくて、水でこんなにも味が変わるのかと思いました。神山の湧き水との相性を考えて作ったコーヒーということで、家で作って飲んでいるのとは全く違うコーヒーでした。ドリップでの上手な淹れ方を教わったので、今度は自分でもドリップしてやってみようと思います。
神職さんに神社を案内され、途中で神話を教えていただいたりしながら夜にお参りできたことは、とても貴重な体験で面白かったです。また、神山湧水珈琲の珈琲教室では、レクチャーを受けながら淹れてみたコーヒーをブラックで飲んだ瞬間、すごくすっきりした味わいで思わずハッと驚きました。もう一度、体験してみたいですね。
