執筆:2024年9月
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群馬県太田市にあるAGF関東株式会社(以下、AGF関東)の工場は、味の素AGF株式会社(以下、味の素AGF)の生産関係会社として2006年4月に発足し、主に東日本への供給分の生産を担っています。コーヒー豆の焙煎からコーヒーの包装まで一貫して担うことができる最新鋭の製造設備を有します。
変わらない味を生み出し続けているAGF関東。それは決して機械や設備のみでは実現しません。「安心品質をお届けする」という信念を持った社員の存在があってこそ実現するものです。
今回は、現場の最前線で活躍されるお二人にお話をお聞きしました。
コーヒー豆という農産物のデリケートさに向き合う
1995年、群馬県新田郡尾島町(現太田市)に尾島工場として新設されたのがAGF関東のはじまり。当時から生産されているレギュラーコーヒー商品は、原料となるコーヒー豆の検査に始まり、焙煎を経て粉砕する工程、さらに包装してお客様にお届けできる状態まで、この工場の中ですべて行われています。
現在、管理部で品質管理グループの係長職を担う谷口愛美さんは、「この工場で使っているコーヒー豆の調達の段階から品質管理の仕事がはじまります。商品化に適したコーヒー豆かどうか、つまり調達するか否かの検査もここで行っています」と、品質管理の役割について語ってくれました。
谷口さん:
品質管理グループでは、加工前のコーヒー豆を検査し、お客さまにお届けするに値したものしか仕入れません。コーヒー豆は農産物ですので、同じ品種でも熟し具合の違いなどで加工後の風味に大きな違いが出ることがあります。私たちの味覚と嗅覚で、目の前の豆の状態を的確に評価しなければ「いつもと同じ」という品質を確保することができません。
ごく少量の豆を専用の小さなロースターで焙煎し、カップに入ったコーヒーの粉にそのままお湯を入れて抽出する方法(スティーピング*)で検査します。これは、会社で厳格に定められた方法と評価基準を体得して行うもので、さらには自分の感覚に狂いを生じさせないようコンディションを管理して臨みます。
大学で植物を研究していた谷口さん。品質を見極めるようになるために9カ月間のトレーニングを受け、その後は実践を重ねたといいます。仕事の前日はアルコールを控え、当日も刺激の強い食品などは口にせず、味覚と嗅覚の鋭敏さを保つために、私生活にも気を配る徹底ぶり。そうした厳しいチェックを経て仕入れた豆は、豊かな香りを生み出す焙煎という工程に進みます。
そこを担当しているのが入社9年目を迎える佐藤尚樹さんです。豆に火を入れる際に気を配る点を教えてくれました。
佐藤さん:
最新鋭の焙煎設備でも、その時々で火の入り具合には微妙な差が生じます。気候の変化はもちろん、昼と夜など時間帯によっても違いますから、私たち担当者はその違いを都度見極めながら調整をし続けています。さらには、ブレンドされた豆ごとに異なる焼き時間の目安を考えて、「いつもの美味しさ」を実現できるよう最適な焙煎を行います。
私はこの工程を担当して4年目ですが、そうした目安をつかむ感覚は、まだ先輩方にはかないません。もっと勉強して、品質と効率を高度に両立させる判断を先輩から受け継いでいきたいです。
「いつもと同じ」に不可欠な「基本」の意味
お二人のお話の中は、「いつもと同じ」というキーワードが共通していて印象的です。そのことについて、谷口さんに問いかけてみました。
谷口さん:
やはり、味の素AGFの味わいを求めているお客さまに、いつも同じ状態、同じ味、同じ品質の商品を届ける責任が、私たちにはあると思っています。
例えば、異物を混入させないためにヘアネットを装着するなどの基本的なことをはじめ、工場内には細かなルールや手順がたくさんあります。それらすべてに、その責任を果たすための意味があります。数多くの基本をやらなければ「いつもと同じ」は作れない、ということを誰もが理解し、行動を続けられるようにすることを重要と捉えています。
谷口さんの言葉をうなずきながら隣で聴いていた佐藤さんは、「谷口さんのように尊敬する先輩がたくさんいる」と言いながら、ご自身が心がけていることを教えてくれました。
佐藤さん:
「いつもと同じ」品質をお届けすることに一番重きを置いた上でのことですが、私は生産プロセスにおける効率や後工程への影響や月次の生産量なども考慮し、いかに焙煎の工程でマイナスな影響を生まないかにも工夫するようにしています。焙煎工程は一番上流。下流の工程に迷惑をかけないことも大事だと思っています。
谷口さんが日々の節制を忘れないことも、佐藤さんが下流工程に気を配っていることも、お客さまに「いつでも、ふぅ。」をお届けし続けるための姿勢そのものだと感じます。
仕事に向き合う一歩手前の、大事なコーヒータイム
そんなお二人にとって、ご自身のコーヒータイムはどんな意味合いをもっているのでしょうか。
佐藤さん:
私は3交代で勤務していますので、決まった時間の一杯というのは難しいのですが、通勤する車の中でコーヒーを飲む時間が大切なひと時です。しかも甘いもの、特にシュークリームと一緒に(笑)。焙煎にはデスクワークで行う仕事もあり、頭を使うため、糖分を欲するのかもしれません。昨秋に子どもが産まれたこともあって、父親としてもっとがんばりたいと思っています。谷口さんのような皆に頼られている先輩方に追いつけるようになりたいですね。
谷口さん:
わが家は、上は中学生から下は5歳まで、3人の子育て中です。まだ手がかかるので、子どもたちが起きている限り、自分の時間というものがありません。ですので、家族が誰も起きていない早朝にスティックを飲んで味わうのが貴重な時間になっています。
実は私、入社するまでコーヒーは苦手でした(笑)。でも今は、焼き方や品種によって味が変わるコーヒーに面白さを見出だすことができ、好きになりました。
コーヒーの風味を確認する力量の維持向上にはまだまだ先がありますし、品質管理の知識向上にもチャレンジし続けたいと考えています。
子育て中のお二人はプライベートでも親としての役割を担いながら、AGF関東でも自らの役割にさらなる磨きをかけようと意欲的です。AGF関東がモットーに掲げる『一人ひとりのお客様に、いつでもどこでも、最高のおいしさで一杯の価値を提供する関東発の愛される嗜好飲料生産会社』には、その実現のために不断の努力を続ける人たちが働いています。
AGF関東では、そんな製造現場の魅力を間近に感じられる工場見学を実施しています。 今回お話をうかがった佐藤さんや谷口さんが大切に維持運営されている各工程の様子が分かります。ずっと見ていたくなるようなパラレルロボットなどのスピーディに動く設備などが見学できます。ぜひ一度、ご参加ください。
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スティーピングとは
スティーピングとは挽いたコーヒーが入ったカップに直接お湯を入れ、しばらく漬けておき、コーヒーが抽出された上澄みだけを飲むこと
- 組織名や所属、肩書、業務内容、商品情報等を含むすべての記載内容は、各取材及び執筆時点のものです。
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